【12】

■ ワークショップが与えたもの

光洋 山ごもりを終えたら、翌日からまたそれまでやっていたハードなトレーニングです。

―― 体を戻す時間というのはないんですか?

光洋 大丈夫だっていうんです。

―― いきなり食べたらいけないとか・・・。

光洋 すぐには食べられないんです。胃が小さくなってるから。
  やってみると、たしかに体が軽くなって、ポンポン跳べるんです。「ウッソみてェ〜」と思って。ほとんど食べていない状態だったんだけど、「ああ、大丈夫なんだァ」と思いました。
  それを一週間やって、土日が休みなんですが、「来週の月曜、きついよ。あんまり食べない方がいいよ」と言われたんです。
  そしたら、もういわれた通りなんです。
  一週間山ごもりをやって、食い意地だけは張ってるじゃないですか。でも戻ってきてすぐには食べられない。でもだんだん、胃がもとに戻ってきて、一週間経つころには食えるようになってくる。だから、土日にバーッと食うんです。すると月曜は体が重いんです。月曜日は死ぬほどつらかった。

―― ああ、なるほど。

光洋 ワークショップも一週間を残すころ、トレーニングをやっている最中に、「ああ、あと一週間で終わりかァ・・・」と思ったんです。「楽しかったなァ。ここはもうこれで終わりなんだァ」。そしたら、なんだか悲しくなって、泣きそうになったんです。
  泣きそうになって、ついでに脇腹も痛くなったんですが(笑)、妙に感動したんですよ。
  そのときにね、「あ、これって宗教体験だ」って思ったんですよ。

―― ああ、わかるような気がします。日常性を超えたところで身体と向き合ったことから来たんでしょうね。

光洋 一生のあいだで、こんなに体が動くと思ったことはないんです。二、三時間も全力を出した状態でやってるから、ジャンプしようと思っても跳べなくなってくるんですね。でもあるとき、痛い、つらい、吐きそうだと思っても、(自分に)「跳べ!」というと跳べる状態になったんです。そのときは自分でびっくりしました。なんだ、やればできるんじゃない・・・。「おれってすごいな」って思いましたよ(笑)。
  今までダメだと思ってたのは、自分に精神力がないだけなんだと。自分を押す自分がいなかっただけなんだと思って。
  もう一つ、田中泯さんのワークショップに参加した理由として、なんで即興ができるのかな、と思ってたんですよ。その頃、泯さんは即興で踊ってたんです。(事前のプランが)何もない状態で一時間とかのあいだ、体を動かすというのは、どうしてできるんだろう、と。しかも、お客の視線の前で。
  でもそれは、二ヶ月やってもわからなかったんです。ふた月やそこらでわかるとも思ってなかったんですけれど。
  あるとき、トレーニングが終わって夜みんなで飲んでるときの話で、泯さんがこんなことを言ったんです。踊りっていうのは、別に決められた振りをすることではなくて、音楽に合わせて体が揺れてる、あるいは、揺れなくても(身体の)中が動いているとか、それが踊りなんだ、っていったのか、踊りの始まりなんだっていったのか忘れましたが、そう言われてすごく救われたんです。
  ぼくは基本的には踊りが嫌いなんです。カウントをとって、ステップがあって、振付をして・・・というのは今でも嫌いですね。だけど、楽しくて体を動かすのが踊りだ、と言われたら、ぼくも踊れると思ったんです。それなら誰でも踊れるし、踊ってる瞬間があるんだと、すごく気が楽になったんです。
  それを得ただけでも、良かったと思いますね。

―― その後は、田中泯さんとのお付き合いは?

光洋 そのときだけですね。あとは、公演をたまに見に行ったりというぐらいで。

―― ずいぶん中身の濃い二ヶ月でしたね。

光洋 ぼくにとっては。体を動かすということに関して・・・何なんですかね・・・舞台の存在の仕方みたいな・・・そういう、今やってる根本になっているものをそこで習った気がしました。

―― ワークショップの後は、どんな活動をされたのですか?

光洋 今まで体を動かせなかったのは自分の意志が弱いだけだったんだと、意志が強ければ、いくらでも体はついてくるんだと、そういうことを二ヶ月のワークショップで実証したみたいなところがあるので、イケイケでいろいろやったんです。
  冬、雪が降っている外で、裸足でじっとしているとか。いま考えると何の意味があるんだろうと思いますが(笑)。

―― 山ごもりの追体験をしようとしたわけですね。

光洋 そうそうそう。あのとき自分がある燃え方をした何かを確かめたかったんでしょうね。
  体にバラ線を巻いてゆっくり動いてたりとかね(笑)。結構痛いんですけどね(笑)。

―― それは痛いでしょうね。

光洋 バラ線巻いて練習しているときに、事務所のマネージャーが部屋に入ってきたんです。「おはようございます!」って入ってきたんですけど、ぼくはこういう(体にバラ線巻いてゆっくり動いている)状態で、「おはよ」って言ったら、びっくりして「失礼しました!」って出ていったんです。
  練習を終えて事務所へ行ったら、ぼくが変な趣味の持ち主みたいな話になってて(笑)。「山本さん変わっちゃった」なんて言われて(笑)。

 

(平成13年03月)

――つづく――

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