
【9】
■ とんだエジプト観光
光洋 劇団でイタリアに行った帰りにエジプトで二泊したんですが、その話をしてもいいですか?(笑)
―― ぜひお願いします。
光洋 エジプト航空は便があんまりなくて、向こう持ちで二泊ホテルを取ってくれるんです。せっかくだから見て回ろうよ、ということになって。
空港を出るときに、必ずエジプトのお金に換金しなきゃいけないんです。そのお金は元のお金、ドルならドルには戻せないんです。
―― じゃ、そこで使ってしまわなければいけないんですね。
光洋 そうやって外貨をかせぐんでしょうね。
そしたら、税関の向こうの方で、おにいちゃんが「こっちこい」と手招きするんですよ。何かと思ったら、「おれに任せれば税関を通らなくても大丈夫だ」と言うんです。こちらは全部で五人いたんで、これなら何かあっても大丈夫だろうというんで、任せたんです。そしたら本当に空港をでることができたんです。
空港を出たら、観光案内みたいなのがズラッと並んでいるんですよ。着いた時間が遅くて一一時か一二時になっていたので、もうポツンポツンとしか開いてないんです。その一つに入っていって、「実はね・・・」と言うんです。やっぱり(笑)。
「おれは安くツアーを組んでるんだ」と。一人六〇ドルって言ったかな、「六〇ドルでこことここを見せてやるから」。そんなに悪い話じゃないんですよ。あのころ一ドル一五〇円ですから、一万円せずに、博物館から、ピラミッドから、バスで行けるというんです。でも恐いから、「半分だけ払う、あとの半分はバスに乗って確認してから払う」と交渉したんです。
―― 英語でですか。
光洋 英語です。まだアメリカから帰ってきたばっかりでしたから。そのためにイタリアツアーに連れて行かれたんです。
で、ホテルのバスを呼んでくれたんです。そのバスに乗ったら運ちゃんが、黒人の運ちゃんでしたけれども、「いまのやつと何を話してたんだ」というから、これこれの観光案内を頼んだんだと。「いくらだ?」「一人六〇ドルだ」「高い」というんです。「キャンセルしろ。おれの友だちが車を持ってるから、半額にしてやる」と。「でも今半額払ってきたんだ」といったら「払い戻せる。一人が急病になった、と言え」っていうんですよ。みんな貧乏人だから、やっぱり安い方がいいということで・・・。
それで店に戻ると、ガタイのいいのが五、六人いて、「こわいな〜」と思ったんですが、ドキドキドキドキしながら「一人急に風邪引いちゃったから・・・」と言ったんです。「じゃ、四人にするのか?」「いや、みんなでホテルにいることにするから、半分返してほしい・・・」。
「・・・わかった」ということで、返してくれたんですよ。逆に驚いちゃって。
―― よかったですね。
光洋 「ごめんね」といったら、「いや、いいんだ」と。そしたら、そこまで一緒に着いてきてくれたやつが、イタリアでみんなに配ろうと思って持っていって余ってた物があったんですよ、それを「じゃあ、これ」って配ってんの(笑)。
■ ピラミッドは霧の中
光洋 ホテルで一泊して次の日。大きな車が迎えに来てたんですが、五人乗るともうギチギチなんです。「なにこれ」と思ったんですが、みんな「こんなもんだよ、こんなもんだよ」って(笑)。
―― 「これが遊びですよ」(笑)。
光洋 最初にピラミッドを見に行こうということになったんです。その場所に着いたっていうんですが、霧で周りなんにも見えないの。みんな「だまされたよ」と口々に・・・。「ほんとだ、なんにも見えないじゃないか。みんな車から離れちゃだめだよ。こんなとこに置いてけぼり食わされたら、帰れなくなちゃうから」。
だけど案内人は、「大丈夫だ。ここなんだから。目の前にあるんだ」っていうの。嘘つけ(笑)。
それから一五分か二〇分ぐらいしたら、霧が晴れたんです。晴れるときは一気に晴れるんですけど、目の前に本当にピラミッドが・・・。「おお、ほんとだーッ!」
―― へぇー。
光洋 下の方の石なんか、一つのビルぐらいあるんです。「ああ、確かにこれは謎だよな。こんなもん、どっから運んできたんだろう。ほんとにすげぇな」と思って。
しばらくすると、ラクダに乗った男が近づいてきて「ラクダに乗らないか?」と。 おもしろいのは、アメリカでもそうなんですけど、観光地へ行くとね、必ず「お前は日本人か?」と聞いてくるんです。日本人はいい客なんですね。
―― なるほど。
光洋 「日本人だ」「これに乗れよ」「いくらだ」「一ドルだ」。一ドルならいいかっていうんで、ぼくが最初に乗ったんです。
ラクダってすごいですね。前後にすごい揺れなんです。みんなで乗ろうと思って、一〇メートルぐらい行って替わろうと思ったら、「はい一ドル」(笑)。「そんなこと聞いてないよ」「一人一ドルだ」。で、ラクダはやめて。
すぐ近くにあるスフィンクスを見ていたら、白いターバンを巻いたオヤジが来て、「お前たち日本人か?」(笑)。
「一人一ドルでお前たちの知らないことを教えてやる」って言うんです。で、結局そのオヤジのしたことといったら、「ここがピラミッド、ここがスフィンクス・・・」(笑)。「それだけ?」っていったら、そこにウンコ座りをさせられて、砂の上で「ピラミッドはこうやってつくったんだ」って説明をされておしまい。うわぁー、このオヤジ(笑)。
―― なかなか油断なりませんね。
光洋 次に行ったのが、エジプト市内の博物館なんです。大きな部屋はいいんだけど、小さな部屋は門番みたいなのが立っていて、入ろうとすると「一ドル」って言うんです(笑)。面倒だから見ないことにして・・・。
そしたら、ぼくたちを案内していたオヤジが「ちょっと」というんです。「おまえたちを朝八時から案内して、今一二時だ。ここで・・・料金は切れた」(笑)。
―― 「真田小僧」みたいだなぁ。
光洋 「いや絶対だめだ」とやりとりをして、結局向こうが折れました。食事して、もう一ヶ所見て、最後にベリーダンスを勧められたんですが、「もういいよ」ということで、もう一晩エジプトに泊まって帰ってきたんです。
(平成12年12月)
――つづく――