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 今月から一年間は、新たな「ロングインタビュー」シリーズとして、パントマイムの山本光洋さんにお話を伺います。
  光洋さんは、マルセル・マルソーやヨネヤマママコといった、いわば芸術の方向に行ってしまったマイムではなく、あくまでも「笑い」を主眼とした、「お笑い」の方向を向いたマイムの第一人者と言っていいのではないかと思います。渋谷ジァンジァンで開いていた『山本光洋ソロマイム』は、毎回超満員の人気公演でしたし、むごん劇カンパニーによる『イメージ・シネ・サーカス』にも参加して、素晴らしい体技を見せてくれています。
  落語のように「ことば」を主な手段とするのではなく、「身体」によって充実した笑いの世界を展開している山本光洋さんのお話を、ぜひお聞きください。新たな発見があるかも知れません。

■パントマイムとクラウン

―― 光洋さんはご自身の芸を「パントマイム」と呼ぶことが多いようですが、、サーカスの道化師つまり「クラウン」という言い方もありますね。

光洋 そうですね。クラウンというのは、一般的には人を笑わせる人みたいなイメージがありますけれども、ぼくの中では、存在のし方のようなものなんです。
  これはあくまでもぼく個人の感覚ですが、「この人いいなぁ」という人はみんなクラウンぽいんですよ。舞台に出て絵になってるというか。例えば、もう亡くなった方なんですけれども、フランスのおばあちゃんがいて、二つのバンドネオンを手に持って、上げ下げして簡単な音を出してるだけなんですけれども、この人いいなあと。たたずまいなんですね、ぼくの中では。
  パントマイムは、ぼくの中では、自分を表現する手段ですね。きっと人によって考え方が違うんでしょうけれども、ぼくはパントマイムのためにパントマイムをやってるんじゃなくて、まず表現したい自分がいて、たまたまパントマイムっていう手段に一番時間を使っているんで、外から「あなたは何ですか?」って言われたときに、物も使うし、少しはことばもしゃべるけれども、体を使うことを一番の武器として人に作品を見せているので、パントマイムと言っているんです。

■爆笑さそう光洋マイム

―― 光洋さんがふだん舞台でどんなことをおやりになっているかということをご紹介したいんですが。まず「磁石」とゆうのがありますね。舞台の一方に鉄柱のようなものを立てて、光洋さんが大きな張り子の磁石を持っていると、磁石が鉄柱に引き寄せられるから、全身を使って懸命にくい止めようとするけど、磁石の強さに負けてしまいそうになる・・・という。そこにあるはずのない磁石が目に見えるように感じます。

光洋 パントマイムは、テクニック的にはそんなに数があるわけではないんです。
  「綱引き」とか「風に吹かれるマイム」ってありますよね。歩いていて風に吹かれてあおられるマイム。それから「固定点」というのがありまして、空中に動かそうとしても動かないポイントがある。自分が動くことによってポイントが固定していることが鮮明に見える芸なんです。何を固定させるか、どういう状況で固定させるかというのが、人によって違ったりするわけなんです。
  「磁石」もまた、そういうものの応用なんです。
  結婚式へ行ったりすると、鉄柱を誰々、磁石を誰々と、新郎新婦の名前をつけてやったりするんです(笑)。くっつこうとするのをぼくが必死で止めようとするんだけど、結局くっついちゃう(笑)。

―― いいご祝儀ですね。

光洋 そういうとき、「ああ、芸人になっちゃたな」って思いますね(笑)。

―― 「ニワトリ」というのもありますね。ニワトリの扮装をして・・・。

光洋 「ニワトリ」は、ま、動物の形態模写なんですが。マルセ太郎さんなんかも、ニワトリをやるじゃないですか。でも、ぼくの場合は、ニワトリの扮装をしながら簡単なマジックをやったり、お客さんとからんだりするんです。

―― お客さんを舞台へ上げたりするでしょう。お客さんにニワトリのトサカをかぶせて、「舞台のここに立って欲しい」ということを伝えるときに、その場所を指さしながら、ニワトリの鳴き声で「コッコッコッコッ」とやったりしますね(笑)。あれはことばのようなことばじゃないような、何ともいえずおかしいんですが。

光洋 クラウンの人がよくやるような、意味をなさないけれども、感情は伝えることばというか・・・。
  「あ」なら「あ」だけで、いろんな感情を伝える言い方があるじゃないですか。「あっ」というのか、「あーン」というのか、「あ〜 ぁ」というのか。そういうのは共通語で、海外でやっても通じることばですね。ことばっていうよりも音声なんですけれども。

―― ほかにどうのがありましたっけ?

光洋 「さかだち君」というのをやってます。 靴のついたズボンをかぶって、足に手袋をはめて、股間に人形の頭をくっつけて、パッと立ち上がると、逆立ちをしているように見えると(笑)。それで「マンボNo.5」で踊ると、そういうことをやってるんです。

―― これはおかしいですね。

光洋 これは何が楽しいかというと、現象は大したことがないんですけれども、お客さんを前にして、一つ一つ(道具衣装を)出していく過程が楽しいんですよ。
  順番をいろいろ考えたんですよ。最初をどれにしようって。最初にズボンを出してきた時点では、早い人はわかるんですが、ほとんどのお客さんはまだ何をやるかわからないんです。手袋を足につけたあたりで、みんなはっきりと認識するんです。で、だめ押しで股間に頭をくっつけると。

―― なるほど。これは過程を楽しむ芸なんですね。
  やっぱり笑いを取ろうということですよね。光洋さんの芸の中心には、笑いがあるような気がするんですけど。

光洋 そうですね。一番確実なものですしね。返ってくるのもはっきりしているじゃないですか。もちろんぼくの作品の中には、動きできれいに見せたいというものもあることはあるんですけど、でも割からいったら八対二ぐらいの割で、ほとんどは笑いですね。
  笑いは快感ですね。失敗して笑われたら、次はわざと間違えますからね(笑)。 

(平成12年4月)

――つづく――

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